ハイヒール・フィットネス

<ハイヒール・フィットネス>
 
ハイヒールシューズをトレーニング用具として考えると付き合い方がわかりやすい。いったい誰が、スキーやスケート靴を履いて通勤するだろう。。スキーは雪、スケートは氷、ハイヒールはパーティ会場やダンスフロアやオフィスなどのフロアで、それぞれ使用するように作られたものなのだ。だから、ハイヒールを履いて駅の階段や舗装道路など歩けば、膝や腰や靴が憂き目にあうのである。
 
スキー、スケート、ハイヒールシューズの共通点は足首の関節の動きに制限がかかっているという点である。という事は、それ以外の関節で運動を代償する必要に迫られる。また、スキーやスケートでは接地した瞬間に滑っているから床反力による衝撃が減じる。ハイヒールは床に置いたときに滑らないから、股関節から骨盤そして背骨などの回転回旋運動によって衝撃吸収を計るのが理にかなっている。中世ヨーロッパの宮廷舞踏でつま先重心で綺麗に回転するために創られたという説もある。
 
歩く場合、かのマリリンモンローのごとく、骨盤から背骨を盛大に揺らしながら回転させるセクシーウォークとなる。ハイヒールは骨盤を中心とした回転運動を抜きには、健全に歩くことは不可能な代物なのである。
 
ところで、女性の身体は男性に比して筋肉の緊張度が緩いので、揺らぐ、揺する、捻じる、回す動きになりがちである。崩れつつ動く、これが女の動きである。この崩れつつの動きの中心を引き締めさせるのがハイヒールの役割でもある。足元の基底面が狭くなり、かつ重心位置が高くなって不安定性が増した状況で、全身のパーツをつなぎとめようという活動が起きるのである。
 
こう考えてくると、ハイヒールは女性の身体運動トレーニング用具として有用であると言える。美しい動きとは、無理なく効率の良い動きと言い換えることができる。私がハイヒール効果を見出したのは40代の後半にフラメンコダンスを夢中になって練習したのがきっかけとなった。6㎝ヒールで足腰傷めずに踊るには骨盤を中心とした回転運動が欠かせない事に気づいたのである。
 
私のハイヒールフィットネスは、例えば、キッチンでまな板包丁仕事をする、もちろん70~80年代洋楽ポップスで身体が勝手に踊りだすに任せる等、愉しんでやっている。
 
竹内理子(Rico)
理学療法士
フェルデンクライスプラクティショナー
ダンサー