クマがコブラと連れ立って、オマの屋敷を初めて訪ねた時は、夕暮れの中でここはお城かと思ったものだった。本物の中世の城跡は、村の中心部で展望台になっていて、遥かな山並みの向こうは地中海、眼下にはグライダーの発着場が見える。こ…
ドラクマ ~フランス編その②~
マニュアルトランスミッションは実に15年ぶりで、しかもフランスは右側通行である。そしてこの山中の村は、坂道だらけで、いろは坂みたいなヘアピンカーブの連続を登り降りしなければ、日常の買い物にも行けない。坂道発進の難所もある…
ドラクマ ~フランス編~
クマにとって2年ぶりのヨーロッパだった。ミュンヘンから毎夏のように日本へ帰省していたのだが、今やすっかり日本のクマになり、まるで違う心持で暮らしている。 オマがガンに罹り、化学治療を始めたと聞いたのが春先で、お祖母ちゃん…
ドラクマ覚え書き
ドラ娘とクマ母の話は、ミュンヘン在住時代に、司馬遼太郎氏の歴史小説を読みあさっていて、事実を素材に物語を書くことを始めた。司馬氏の影響を大きく受けている。どこが?と思われる向きもあるかもしれないが、そうなのだ。氏のように…
ドラクマ ~やっと海水浴~
<あらすじ> さすらいのシングルマザー浦島クマ、帰国してから辛いのは自然からの距離が遠のいたことだ。5月のよく晴れた1日、娘たちとザブザブ泳ぎ、息を吹き返している。 *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*…
ドラクマ ~慣れないこと~
クマは2カ所のオフィシャルワークと、合間に本来のプライベートの仕事で家計を支えている。帰国してから季節が二巡し、冷房と空調が恐ろしい夏が近づいてきた。クマは夏の申し子のように、手足を出して日を浴びて、朝夕と海に飛び込むの…
異文化暮らしの効能
クマは、異文化間での逆カルチャーショックからの回復に1年半を費やした。 この春、冬眠から醒めた時期、心持ちが変化しているのに気づいた。帰国して故郷で暮らしを再構築するのと、故郷で根を張り異国での暮らしを懐かしむのとでは、…
日本という洪水
クマは、春の訪れには、冬眠から覚めた感覚になる。とにかく忙しくて眠らなくてはとても身が持たない冬だった。ドイツにいれば、今頃は野原でタンポポや行者ニンニクにイラクサなど食卓のための採集をしていた。雪が溶けた窓を磨いて、窓…
ドラクマ ~砂上の楼閣~
帰国後しばらくの間、クマはドイツでの暮らしについて何も思い出さなかった。言葉もそうだし、ことごとく忘れていた。あちらで積み上げてきた事が大変だったからと、こちらでまた土台から築いていくのに精一杯で、済んだことなど覚えてい…
ドラクマ ~エアポート~
<登場動物> 浦島クマ さすらいのシングルマザー。脳天気でマイペース。 ドラ クマの娘。ティーンエージャーで、壊れたオモチャ状態。 ノラ クマの姪。野良育ちで拾われ、狼に育てられた子供状態。 ウマ クマの母。馬車馬の如く…