クマにはクマ友が何名かいる。アキタのモリノクマから連絡があり、アオシシが早暁にあちらポクナモシリへ逝ってしまったと泣いている。コロ難対策で、国内外の行き来が不便となり、アキタに久しく行っていない。ブナの原生林を歩き、十二…
ノラとコロ難
この春、タコツボ小動物学校を卒業したノラが、カササギ中動物学校に入学して間もなく、高熱を出した。幸か不幸か週末であったため、一日寝かして氷水袋で頭を冷やし、月曜の朝には平熱に戻った。しかしながらご時世である。クマの生業は…
オマ舘の前庭の桑の実
精霊降誕祭は5月の半ば頃で、南仏オマの舘へ行くと前庭に桑の実が色づいている。オマもコブラもこのファミリーメンバーの背丈だと楽に実に手を伸ばしているが、クマにはあと少しで手の届かない高さである。よじ登って心地よい位置に落ち…
ノラの卒業クマも春休み
タコつぼ小動物学校の卒業式の保護者席では、長髪を後ろで束ねた浅黒いお父さんたちが、今朝の波は膝だったとかいう会話で和やかである。クマから見ると、年代がずっと若くて愛らしい保護者たちである。卒業生入場が始まると、中学校の制…
クマの庭
雨上がりの庭は緑が勢いづいて鬱蒼としてきた。クマは農耕種族ではない。この海辺の街の高台の一軒家に越してきたとき、庭は綺麗に整地され先住人の庭木は跡形もなくなっていた。柔らかい雑草が生えて伸び風に吹かれるのを眺めて暮らして…
ドラクマストーリー ~ドラの誕生~
出産前日までクマは自転車を漕ぎ湖で泳いでいた。自転車は、ふんぞり返って背もたれに寄りかかり、両脚を前方に伸ばして漕ぐ画期的なタイプを、コブラがアメリカで手に入れてドイツに送ってもらったのだ。そんな代物にアジア系の臨月のク…
逝きざま
ものを言うことも書くこともできないときがしばらく続いた。失っていた言葉が少しずつ押し出されるように出てきたのは、バラが逝ってからだった。バラは逝く時が近づいたのを知ると、すぐに仕事を辞め、奥の部屋で寝たり起きたりしながら…
卒業
駐機場は飛行機が少なくて閑散としている。欠航便が相次ぎ、チェックインカウンターでは複数名のスタッフに取り囲まれ、いつになく手厚い接遇を受ける。ドラの出発には例のごとく家族総出で空港まで見送った。 ドラは家族…
ドラクマストーリー ~北のモリノクマ~
クマがモリノクマからの誘いで北に踊りに行ったのはお盆だった。今回は白神の巨木たちに会いに来ないかというので出かけた。クマの出で立ちは着物に足元は地下足袋で、久しぶりの新幹線に乗った。アキタ駅に着いたら、局地的な集中豪雨が…
ノラの運動会
集団心理というものだろうか、運動会ではよく泣かされる。去年に続き今年はさらに泣かされた。姪のノラが後ろの方から疾走してくる姿によくぞ大きくなったなあと感動するのとは違う。そういった個人的感傷とは異質のものである。 ある一…