異文化暮らしの効能

クマは、異文化間での逆カルチャーショックからの回復に1年半を費やした。

この春、冬眠から醒めた時期、心持ちが変化しているのに気づいた。帰国して故郷で暮らしを再構築するのと、故郷で根を張り異国での暮らしを懐かしむのとでは、心境が著しく違っている。再構築の最中には、ついこの間までいた異国のことなど全く思い出せない。ずいぶん経った頃に異国での様々な情景が浮かんでくる。

これは一体なんだとか、理解に苦しむとかいった状況に戸惑い憤り、度重なると悲しくなり、さらに時が経過して諦めの境地になる。そして、どう取り組んでいこうかと立ち上がる。ショックの受容と適応の過程である。

そもそも国外へでるような者には、国内での違和感をどうにもできずに、探したり、見つめたり、創り出したりする成長過程そのものを、異文化の中で行う場合がある。その対象は結局自分自身なのだ。異文化にいるとあまりに自分が周囲から違い、違いが浮き彫りになるので、自分を理解しやすくなる。

そういうわけで、自分らしさに磨きがかかり帰国した者は、さらに故郷で浮き上がるのは必至である。ところが、全く違う価値観が同時に存在することを体験で知っているので、待てよ、いいじゃないのと周囲を受け流すこともできるようになる。そうやって、宇宙の中心は自分の中にあると、信じてしまうに至る。

クマは、世の中を変えようとは思わない。そこに闘いのエネルギーが生まれると楽しくない。自然に世の中は変わっていく。津波で町がそっくり無くなってしまったのだ。ビジネスワールドもマニュアル化も街の冷房と空調も放り出しておく。放っておけば、組織丸ごと自然淘汰されるに違いない、と信じている。

クマは今日も脳天気に楽しいことを探索している。