ドラクマ ~やっと海水浴~

<あらすじ>

さすらいのシングルマザー浦島クマ、帰国してから辛いのは自然からの距離が遠のいたことだ。5月のよく晴れた1日、娘たちとザブザブ泳ぎ、息を吹き返している。

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この頃、ますます歳を感じさせる老母ウマがロバと改名した。ほとんど外出しない。そんなロバも、ゴリラのオンボロ車に便乗して一家で海水浴に出かけた。小さいノラは車の中で、浮き輪を膨らませている。大きいドラは、彼氏が欲しいだの子供が欲しいだの、メスらしくつぶやいている。

このところ晴天の日には、仕事中で訪問車を走らせながら波頭を眺めたり、砂質調査に出かけたのにビキニとT-シャツを忘れたりしていた。街に住んでいるから、せめて仕事先を海方面に求めた意味がない。海水着は何時でも携帯しなければいけない。仕事先の一つのクリニックでは空調が利いてきたが、クマの専用コーナーはスイッチをオフにしてもらった。そんなこんなで体調が海に入らざるを得ない状態になっている。

オンボロ車を木立の日陰に停め、ロバは昼寝と読書三昧、ゴリラは車の清掃やおやつの買い出しに忙しい。この老母と息子はカナヅチだから、水際には近寄らない。クマ、ドラ、ノラは駆け出して飛び込んでザブザブやって日向ぼっこを繰り返す。砂浴まがいの遊びまでやっている。この時期、水は若干冷たいが澄んでいる。生きていてよかった。。

行きも帰りも海近の物件を内覧した。親切なツルカメ夫妻のアレンジで、目の前に富士山と夕日という愛でたい眺望が広がっている。さすがに贅沢なツルカメ夫妻好みなのだった。海辺の町に引っ越すと心に決めて時が経った。絶対によい物件が向こうからやってくると信じてやまないクマであった。