雨上がりの庭は緑が勢いづいて鬱蒼としてきた。クマは農耕種族ではない。この海辺の街の高台の一軒家に越してきたとき、庭は綺麗に整地され先住人の庭木は跡形もなくなっていた。柔らかい雑草が生えて伸び風に吹かれるのを眺めて暮らしていた。土の中にどんな芽が潜んでいるか、周囲からどんな種が飛んでくるか楽しみだった。そして庭の片隅に穴を掘って生ごみを埋めた。毎日掘り返しては新しいごみを加えよく混ぜ新しい土をかぶせる。大体ひと月程度これを繰り返して、隣に新しい穴を掘る。こうして一年がたつと庭の一辺が有機野菜生ごみを埋めた肥沃な土となり、二年経つと2列目が埋まった。
その肥沃な土壌から、気づいたらカボチャやスイカが芽を出し、よく育って実をつけた。トマトも出てきたし、ジャガイモ、アボカドとよく食べる者達が種から芽を出した。そこで、草取りをしないでいると作物が雑草に守られて虫食いが防げる。生ごみさえ埋めてかき混ぜていれば収穫できるほったらかし農法である。クマはこの農法をはじめから知っていたわけではない。やったらそうなっただけである。
クマは先人の知恵に学ぶことにさほど関心がない。自分の思いつきを実践することに興味があり、たとえ失敗しようと痛い目をみようと構わない。体験から学んできたのだ。野性の勘だけが頼りだ。そうやって新しいものが創り出されていくのだ。